入棺体験

〜「死をみつめ、生き方を考える」お寺で医療・福祉関係者が入棺体験〜

■ 死を支える人たちが、自ら棺に入る

「死をみつめ、生き方を考える」お寺で医療・福祉関係者が入棺体験

10月13日(火)、一関市川崎町の曹洞宗常堅寺で、医療・福祉関係者など9名が参加する「入棺体験」が開催されました。
主催は一般社団法人てあわせ。地域包括支援センターが推進する「人生会議(ACP)」の普及を支援し、死を見つめることを通して、今をどう生きるかを考える取り組みです。
日頃から高齢者の暮らしや人生の最終段階を支えている専門職の皆さんが、今回は自分自身の「生と死」に向き合いました。

■ 人を送るということ。模擬納棺式から始まる体験

最初に行われたのは、実際の葬儀を想定した模擬納棺式です。
納棺師の大森あきこさんが、ご遺体役の方に仏衣を着せ、丁寧に棺へと納めていきます。
そして棺には花が手向けられ、住職の読経が響く中、参加者全員が静かに手を合わせ、故人を送りました。
続いて住職から、入棺の心得や「死出の旅支度」についてのミニセミナー。白い仏衣や旅支度には、日本古来の死生観や仏教の教え、伝統的な葬送文化が重なり合っていることをお話ししました。

■ 人生最後の日、あなたは誰に何を伝えたいですか?

入棺を前に、参加者には一枚のカードが渡されました。
そこに書くのは、自分自身の心の中にある言葉です。
• 今までの人生で感謝していること
• 心に残っている後悔や、やり残したこと
• 大切な人や、残される人たちへの願い

「もし今日が人生最後の日だとしたら、あなたは何を伝えたいですか?」
普段はなかなか口にできない思いを、一人ひとりが静かに見つめ直す時間となりました。

■ 暗闇と静寂の中で、自分の死と向き合う

いよいよ、自ら棺に入る体験です。
棺に横たわり、蓋がゆっくりと閉じられると、そこには暗闇と静寂の世界が広がります。
その中で、先ほど自分が書いたカードの言葉が読み上げられます。
家族への感謝、心残り、そして大切な人への願い……。
生きているうちに、自分自身の死を疑似体験する数分間。
参加者の中には、思いが込み上げ、涙ぐむ方の姿もありました。

■ 蓋が開く。差し込む光は、生きる喜び

そして、棺の蓋が開かれます。
暗闇の中に差し込む光。
そこには、再び目にする人の顔があり、いつもと変わらない日常の世界があります。
けれども、その光景は、それまでとは少し違って感じられたのではないでしょうか。
暗闇を知ることで、光のありがたさに気づく。
死を見つめることで、生きていることの尊さに気づく。
仏教には「生死一如(しょうじいちにょ)」という言葉があります。生と死は切り離されたものではなく、一つにつながっているという教えです。
棺の蓋が開く。それは、もう一度自分の人生を生き直すための扉が開くことでもあるのです。


「ありがとう」と伝えたい人がいる。
もう一度、やってみたいことがある。
そんな気づきこそ、この入棺体験で大切にしたかったことです

■ 自分の命を見つめることが、誰かを支える力になる

今回の参加者の多くは、日頃から高齢者の暮らしや命に向き合っている福祉の専門職の皆さんです。
この体験は、まず自分自身の生き方を見つめ直す機会になります。
そして、その気づきは仕事にもつながっていきます。
死を前にした人の不安や孤独に思いを寄せること。
その人が大切にしてきた人生や、最期まで叶えたい願いを尊重すること。
何よりも、「その人らしく、最期まで生きること」を支えること。
支援する側も一人の人間として死に向き合うことで、相手の思いに寄り添う大切さを、改めて感じられるのではないでしょうか。
また、死をタブーにせず、家族や大切な人とこれからの生き方を話し合うきっかけにもなります。

■ テレビ局4社が取材。記者やリポーターも棺の中へ!

この日は朝からテレビ局4社が取材に訪れ、夕方のニュースでも取り上げられました。
NHK「おばんですいわて」では、入棺体験を通して生き方を見つめ直す取り組みとして紹介され、岩手朝日テレビでも、お寺で行われた入棺体験の様子が放送されました。
取材に訪れた記者やリポーターの方々も、自ら入棺を希望
体験後には、それぞれが感じた思いや感動を語っていました。
死を語ることへの関心が、少しずつ社会に広がっていることを感じます。